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企業内コーチ育成のすすめ

※この記事は、㈱帝国データバンク発行「週刊帝国ニュース兵庫県版」に、代表理事・正田佐与が月1回ペースで連載している記事「企業内コーチのすすめ」を、同社神戸支店のご厚意により、転載させていただいています。

第一回 企業内コーチ中国へ行く
第二回 危機感共有を引き出すコミュニケーション
第三回 出店ラッシュを支えたリーダー育成

第四回 カギは「学ぶ」企業と個人
第五回 「オーラのないリーダー」の時代?
第六回 女性活用のコツは?

第七回 やる気のない人をやる気にさせるには?
第八回 リーダーの「叱る力」

第九回 話を聴けない若手、急増中?

第十回 社長が「承認」を学ぶとき
第十一回 「ゆとり世代」を戦力にするコツ

企業コーチ中国へ行く

「中国から正田さんのブログを読んでいますよ」

 かつてのクライアントである「Aさん」から、最近こんなメールをいただきました。
「転職サイトに登録していたところ、中国の日系の工場に口がありました。今では2000人規模の工場の工場長です」。

 Aさんは60歳。大手企業の工場に40年近く勤務、管理職そして工場長を歴任し、転職先のとある工場を建て直していたころ、ちょうど私も依頼を受けて同じ工場を訪問し、Aさんと知り合ったのです。ずんぐりした体形、周囲から慕われる穏やかな人柄、そして冷静に工場の現状を見極めていた人でした。

 転職してきて周囲にも慣れた3 ヵ月目ごろから、Aさんは動き出しました。覇気のなかった製造グループ長の心を動かし、改善の相談を受けるようになり、能力的に今ひとつの資材グループ長のもとにいる社員たちにも働きかけ、この工場の悩みであった納期遅れについて一緒に対策を練り…、

  一時期は、Aさんの上司の事業部長ともども、連日みずから協力工場を訪ね回り、納期への協力を依頼して回っていたものです。

  Aさんが本格的に動き出したちょうどそのころ、この会社で部長・工場長級を対象に「コーチング研修」があり、Aさんも参加しました。

 研修では、「話を聴く」こと、「相手の存在や努力を認める(専門用語で『承認』といいます)こと」、それに「行動を促す質問のスキル」などマネジメントに役立つコミュニケーションスキルを、2 人1 組、3 人1 組で実際にやっていただく実習が続きます。今まさに周囲の人々と関係づくりをし、動かそうとしているAさんには、実にタイムリーだったようです。

 いささかお年を召した(失礼)「生徒さん」だったにもかかわらず、研修でとりあげたことをスポンジに水がしみこむように吸収されました。

「製造の連中、どんどん動きが良くなってきたんだ。毎日『承認』してあげてるからね」
「協力会社さんとの話にも、『傾聴』が役立ったよ。先方も零細企業で、優先順位づけとか、社長さん自身の体調とか家庭の事情とか、色んなことがあるんだね。話を聴くだけで、関係づくりになった。こちらの要望も言いやすくなった」

 こうして、専門知識や経験の上にコーチングという新たな武器を得たAさんの周りで、業務はスムーズに動いていくようになります。
  しかし、直属の上司は、Aさんが人望を集め業務改善をすすめていくのを快く思わず、Aさんを中心とした改善プロジェクトは土壇場で決裁が下りないことが続きました。意気消沈したAさんは数カ月後、自ら退社してしまうのです。

 以来音信の絶えていたAさんから、今回は嬉しいメールでした。

「こちら(中国)でもコーチングは使っていますよ。一度学んだことは役立つものですね(笑)」。

 中国へ移籍した女子シンクロの井村雅代コーチが北京五輪での中国シンクロチーム銅メダル獲得の原動力となり、話題になりました。それのマネジメント版というべきでしょうか。

 コーチングを学び、マネジメントに活用する優秀な管理職のことを、私たちは「企業内コーチ」と呼んでいます。彼らは高いコミュニケーションスキルを駆使し、思いがけないほど大きな仕事をします。

 業務の「カイゼン」に始まり、個々の社員のやる気の向上、職場のメンタルヘルスの改善、時間の効率化、…など人的要素への波及効果はもちろんのこと、売上増、コストダウンなどの業績にもはっきりと反映されます。存じ上げている方々からも、「トップ支店・店舗になった」「売上目標の150%達成した」などとご報告をいただくことが珍しくありません。

「100年に一度か」と言われる金融不安、そして実体経済の悪化。激動の時代、日本企業の底力となるであろう、こうしたマネージャー―企業内コーチ―を一層増やしていきたいというのが、私たちの願いです。

 特定非営利活動法人(NPO)企業内コーチ育成協会の設立を記念して、来る11月29日、JR三ノ宮駅前の「ミント神戸」で講演会を行います。題して「COACHING KOBE(コーチング神戸)~30歳からできる自分育て・人育て~」。

 TV、雑誌などできわめて実証的な「脳育成理論」で話題の脳画像診断医、加藤俊徳氏(株式会社脳の学校代表)と、「承認論」で著名な組織論学者、太田肇氏(同志社大学政策学部教授)が講演。会場の方々との質疑応答、対話も予定しています。
業種を問わず、個人レベルの成長と企業の成長をリンクさせ、不況に打ち克つ強い組織づくりをするためのヒントを得ていただければ幸いです。

 詳細は、WEBサイト http://c-l-s.jp をご覧ください。ご案内ページよりお申し込みもいただけます。

(帝国データバンク発行 TEIKOKU NEWS 兵庫県版 2008年11月17日 掲載)



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