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企業内コーチ育成のすすめ

※この記事は、㈱帝国データバンク発行「週刊帝国ニュース兵庫県版」に、代表理事・正田佐与が月1回ペースで連載している記事「企業内コーチのすすめ」を、同社神戸支店のご厚意により、転載させていただいています。

第一回 企業内コーチ中国へ行く
第二回 危機感共有を引き出すコミュニケーション
第三回 出店ラッシュを支えたリーダー育成
第四回 カギは「学ぶ」企業と個人
第五回 「オーラのないリーダー」の時代?
第六回 女性活用のコツは?
第七回 やる気のない人をやる気にさせるには?
第八回 リーダーの「叱る力」
第九回 話を聴けない若手、急増中?

第十回 社長が「承認」を学ぶとき
第十一回 「ゆとり世代」を戦力にするコツ

第十二回「仕事と生活のバランス」を支えるコーチング
第十三回 リアル上司はバーチャル上司に勝てるか

リアル上司はバーチャル上司に勝てるか

●「そんなの当然じゃないですか!」

 ある旅行代理店にて。

 50代後半の部門長の方がコーチングを受け、ふだんのコミュニケーションの改善や会議進行など、さまざまな努力をされて成果が見え始め
たころのことです。

 20代後半の男性営業社員にヒアリングすると、

「そんなの当然じゃないですか。管理職なんですから」

と言います。

「当然というのはどうでしょうか。あの年齢の方が、ご自分の長年の習慣を改めるというのは大変なことですよ。努力されている姿を評価してあげてはいかがですか」

と私。

「いえ、僕は色んな方とお付き合いがありますから。皆さん、うちの部門長については『最低だ。管理職のあるべき姿はこういうものだ』と言いますよ」

 さて、彼の言う「色んな方」「皆さん」とは、どんな人なのでしょうか。それについては彼は言葉を濁しました。

●バーチャルがリアル世界に「見下し」をもたらす

 ひとつの仮説として最近専門家の間で言われるのが、今、ネット上ではいくらでも有名社長や有名コンサルタントのブログにアクセスできます。コメントを入れ、返事をもらうこともできます。

 そうした、全国区レベルの著名人とコンタクトをとった時に、目の前の普通のおじさん、おばさんである管理職のことを部下は見下しの目でみてしまう、ということがあります。

 日々の雑務に追われ、会社のトップから降りてくる指示にあたふたして伝達し、小さなミスも致命的だからと叱ってくる上司。ただでさえ恨まれやすいものですが、片や現場に立っていない有名人の発言は、かっこよく、きれいに響きます。

 目の前の人や現象を差し置いて「色んな方」「皆さん」というとき、そうした有名人の発言やコメントが念頭にあるかもしれません。

「有名人とのコンタクト」によって直属の上司を見下してしまい、尊敬できない、指示にも従えないという現象は、今、意外に普遍的に起きています。

 とりわけ「アラサー(アラウンド30)」、20代後半から30代前半の層。少し仕事を憶えてきて、でも自分自身は管理職の立場ではなく、人をまとめる苦労はまだ知らない。

「この年代の子たちと話がかみ合わない」
「一生懸命関わってもいつの間にか辞められてしまった」

 当協会のコーチング講座に来られる上司世代の方からも嘆きの声がきかれます。

 団塊ジュニアの年代層の人たちが、勝間和代さん、本田直之さんといった有名専門家の著書を好んで読み、「バーチャル上司」として人生の指南をしてもらう気分になる、という現象を、先日日経新聞のコラム「春秋」で取り上げていましたが、バーチャル上司に人生を指南してもらう若手~中堅の心を、リアル上司は「つかむ」ことができるのでしょうか。

 やはり、現場の上司―部下が一体感を持って仕事をした方が、仕事の能率はいいものです。

●「実は彼女と…」

 ひとつ救いだったのは、

「この年代の子と話がかみ合わない」

と嘆いていたある上司の方から最近きいた話。

 仕事ぶりが不振でミスや取りこぼしが多い、問いかけにもろくに答えてくれない。仕事に不満があるのだろうか、欲がないのだろうかと危惧していた30歳前後の社員。

 上司は、ご本人から話を引き出そうと努めな
がら、

「このままでは本社に戻れないぞ」
「希望の部署に行くためには、こういう実績を上げないといけないぞ」などと、あれこれ話しかけて
いました。

 ある日、当の若手社員から相談がありました。

「…実は、遠距離恋愛の彼女とうまくいってな
いんです」

 パフォーマンス低下の原因は、そのストレスだったのでした。

 それは休みをあげるから彼女に会いに行ってこい、と上司が励ますと、ぱっと部下の顔が輝いたそうです。

 仕事上の関わりで一生懸命親身になって話したのはムダではなかった。真実は何のことはない恋の話、でも本人にとっては大いに深刻だった、というお話です。「本気で親身になる」という点で、リアル上司には「一日の長」がある、ということでしょうか。

(それにしても、そのために「超法規的措置」をとらなければならない上司の方も、お疲れ様です)


(帝国データバンク発行 TEIKOKU NEWS 兵庫県版 2009年11月9日 掲載)

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