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企業内コーチ育成のすすめ

※この記事は、㈱帝国データバンク発行「週刊帝国ニュース兵庫県版」に、代表理事・正田佐与が月1回ペースで連載している記事「企業内コーチのすすめ」を、同社神戸支店のご厚意により、転載させていただいています。

第一回 企業内コーチ中国へ行く
第二回 危機感共有を引き出すコミュニケーション
第三回 出店ラッシュを支えたリーダー育成
第四回 カギは「学ぶ」企業と個人
第五回 「オーラのないリーダー」の時代?
第六回 女性活用のコツは?
第七回 やる気のない人をやる気にさせるには?
第八回 リーダーの「叱る力」
第九回 話を聴けない若手、急増中?

第十回 社長が「承認」を学ぶとき
第十一回 「ゆとり世代」を戦力にするコツ

第十二回「仕事と生活のバランス」を支えるコーチング
第十三回 リアル上司はバーチャル上司に勝てるか
第十四回 話を聴かない社長、原因を探ると

話を聴かない社長、原因を探ると

●社長が忘年会から外された!

相談者「そちらは『話を聴く研修』をされているところですか。父に話を聴くようになってほしいので、そういう研修をするところを探してるんですが。父は会社を経営していますが、社員の心が離れてしまっているのです」

私「それはそれは、困りましたね。具体的にどんな風なのでしょう?」

相談者「父はとても有能で、自力で会社を立ち上げてやってきた人です。決断も早く、行動的で、自分で最前線に立って営業をする人で…。会社を 伸ばしてこの不況でもそこそこ利益を上げ、地域では名士として講演をするようにもなりました。ですが、このところ、社員の不満の声が大きく なってきたのです。『社長は全然われわれの話を聴いてくれない』と。
 私にもそういう声がしょっちゅう耳に入ってきます。社員はあきらめモードで、志気が下がっています。そして最近、社員が社長を嫌いになって いることを実感したのは、忘年会を社長抜きで開いてしまったのです」

私「それは深刻ですね…」

相談者「そうなんです。この不況にせっかく会社を伸ばしているのに、社員の心が社長を軸に1つになっていなかったら今後、どうなるかと。父は 、勉強熱心で色々と経営者のセミナーや塾にも行って勉強していて、言っていることはとても正しいんです。父自身、正しいと思ったらすぐやる といった、いい習慣は身についています。娘の私のことは、経理で
 それなりに実績を挙げていますから、割合私の言うことには耳を傾けてくれます。でも、社員のことは認めていないので、相手が少し話したらさ えぎって、自分の考えばかり一方的にしゃべってしまうんです」

私「なるほど…。セミナーなどで『正しい答え』を沢山学ばれた経営者さんは、人の話を聴いてもすぐ、『正しい答え』が頭に浮かんで しまい、話を聴くことに徹することができないようですね。そういう場合は、学んできた『正しい答え』を一端わきに置いていただく必要 がありますね。それと、お話をうかがうと、『話を聴かない』ことともう1つ、『人を認める』ことにも課題をお持ちなのではないでしょうか 。自分が認めている人の話は聴けるけれど、認めていない人の話は聴けない。そして、認められる人の範囲が非常に狭い、という」

相談者「おっしゃる通りです」

●人前で話す仕事は要注意

私「もう1つ気になったのは、お父様が講演をされるようになった、ということです。実は、経験上申し上げるのですが、経営者さんがある程度 成功を収めてあちこちで講演をされるようになると、社員さんとのコミュニケーションに支障をきたすケースが多々あります。

 講演は1時間から1時間半、一方的に話しますから、そういうコミュニケーションに慣れてしまうと、ふだんの周囲の人との会話もそうなってし まうのです。講演で好評を博した、人々が感銘を受けた、という手ごたえをもつと、ますますそういう傾向が強まってしまうことがあります」

相談者「ああ、よくわかりました。確かに、一方的に話して人の話を聴かない、という傾向は、ここ1、2年急にひどくなったんです。ちょうど講 演のお話をいただくようになったころです」

──これは、当協会によくあるご相談のいくつかの事例をまとめたものです。読者の方で、似たような事例を身近に思い当たられる方はいらっしゃいますか。

ある程度ベテランの経営者さんが「話を聴かない」というご相談は多いのですが、原因を整理すると、

■セミナーなどに頻繁に足を運び、あるいはコンサルタントさんなどの助言により、「正しい答え」を頭にインプットしている。また、セミナー自体がもたらす高揚感の裏返しで、攻撃的になる。

■自分が講演やプレゼン、インタビューなど人前で話をする機会が多い。

■その他(ストレス、疲労、病気など)

というのが、三大原因として挙げられます。

 言うまでもなく、社員の話は現場の情報の宝庫であり、「話を聴く」ことは、変化の激しい現代にあって、経営の命綱です。

 上に挙げたような要因をお持ちの経営者さん、ぜひ、ご自身のコミュニケーションを見直してみませんか。


(帝国データバンク発行 TEIKOKU NEWS 兵庫県版 2009年12月7日 掲載)

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