サイトマップパートナー講師派遣2009年事業計画
            | プライバシーポリシー |メディア紹介歴 |リンク
企業内コーチ育成のすすめ

※この記事は、㈱帝国データバンク発行「週刊帝国ニュース兵庫県版」に、代表理事・正田佐与が月1回ペースで連載している記事「企業内コーチのすすめ」を、同社神戸支店のご厚意により、転載させていただいています。

第一回 企業内コーチ中国へ行く
第二回 危機感共有を引き出すコミュニケーション
第三回 出店ラッシュを支えたリーダー育成

第四回 カギは「学ぶ」企業と個人
第五回 「オーラのないリーダー」の時代?
第六回 女性活用のコツは?

第七回 やる気のない人をやる気にさせるには?
第八回 リーダーの「叱る力」
第九回 話を聴けない若手、急増中?

第十回 社長が「承認」を学ぶとき
第十一回 「ゆとり世代」を戦力にするコツ

危機感共有を引き出すコミュニケーション

 ある人材派遣会社の役員会議にて。

 今年9 月以来、この会社でも予算達成できず、士気が下がっています。そこで、社員に対して
「わが社はまだまだ大丈夫だ。ガンバロー!!」
とぶち上げよう、と息巻く役員に、
「いや、わが社の現状はこうだ、正直『ボロボロ』だ、ということを話し、危機感を共有することが大事ですよ。私は自分の部署でもうそれをやりました」と冷静に切り返したのは、この会社の常務取締役のOさん(36歳)です。

 企業内コーチ育成団体「コーチング・リーダーズ・スクエア(CLS)」(注:NPO法人企業内コーチ育成協会の前身の団体)が5 年前に発足して以来、副代表を務めてきたOさん。

勉強会や打ち合わせにはいつも「パパス」(=中高年向けアパレルブランド)を着て現れるOさんも、今や2 児のパパ。甘いもの好きで少しお腹が気になります。

 Oさんと私の出会いはもう6 年以上も前のことになります。

 当時、Oさんは税理士事務所に勤める、30歳男性。その時どきで後輩がいたり、いなかったり、はっきりと「部下持ち」とはいえない立場でしたが、CLSの前身である、セミナー受講生で作ったメーリングリスト(ML)に参加し、手作りの勉強会にほぼ毎回欠かさずに出席。その後任意団体に格上げしてからは、副代表として、勉強会の企画運営の一翼を担ってきました。

 Oさんは団体の会合でも物静かにあまり発言せず、聞き役に徹し、トラブルが起きると、決してもめ事が好きではない性格ながら、場を収拾させるため建設的な発言をしていました。6年の間に実生活の方では、税理士事務所から人事コンサルティング会社へ、そして現在の人材派遣会社へと転職し、執行役員として入社して2 年後には常務に。

 スピード出世のOさんがこの2 年間にやってきたことはというと…、
経理担当マネージャーとなり、最初にしたことは部下のモチベーションアップでした。女性ばかり4 人の部下は、当初全員が「辞めたい」と言っていたのだそうです。前の上司が典型的な「話を聴かない」上司で、問題が起こって部下が改善提案をしても、取り上げず放っておいた。

 もともとコーチングを学んでいたOさんは、そこで「今は傾聴(話を聴くこと)が大事だ」と気がつきました。部下と1 対1 の面談の時間をとるようにし、話を聴くだけでなく目の前でメモをとった。そこで、部下には「聴いてもらえている」と安心感が生まれ、どんどん話し、改善提案も上がるようになりました。

 また、独自に「チャレンジシート」を作り、会社の目標管理制度とは別の、1 か月単位の個人目標を作らせました。目標設定については「仕事に関することならなんでもいい。自分で考えて」
と部下にゲタを預けると、

「他部署で使えるようなExcelシートを作る」
「簿記検定合格」
「ノー残業デーを作る」
「ある特定分野のミスをゼロにする」

など、自発的に目標を出してきました。

 さらに、「達成したときのご褒美は」と訊くと、部下は
「達成したらみんなに拍手してほしい」
「みんなでケーキが食べたい」
「京都の○×堂のお饅頭が食べたい」
と言いました。お蔭でOさんは仕事の合間にケーキを買いに行ったり、休みの日に○×堂のお饅頭を買いに走ったりしています。

 そうして、常に「みんなで」と意識している職場なので、例えば誰か1 人が目標達成できないかもしれない!というときには、他の人がどんどん手を出して助け合います。

 こうして、全員が「辞めたい」と言っていた経理はOさんの就任3 ヵ月で、会社の中で随一のモチベーション高い部署となり、他の部署の仕事までどんどん取り込んでやってしまう勢いに。

 ミスの件数も減り、それは簡単なことで、「どうやったらミスはなくなるだろう?」と問いかけることにより、社員が自発的に考えてくれるようになったから、とOさんは言います。

 冒頭に触れた、「社員と危機感を共有する」ことを目的にした先月の個人面談では、さすがに経理のメンバー、数字を把握しているだけに、一緒によく考えてくれました。Oさんが「今がんばらないでどうする。ぼくらのできることは何だ。他部署の応援をしていこうじゃないか」と話すと、そこでまた他部署についての様々な提案が上がったそうです。

「みんな、会社に対して帰属意識は持っていますし、潜在的に何とかしなければ、と思っています。それを掘り起こしてやればいいんです」とOさん。 

 今後の課題は、コーチングを、それも小手先のスキルとしてのコーチングではなく、リーダーの人間性尊重の精神を伴ったコーチングをいかに営業など他部署に広げていけるか、またモチベーション高く喜んで仕事するとはいえ、経理につきものの長時間残業をいかに減らせるか、などだ、とOさんは言います。

(帝国データバンク発行 TEIKOKU NEWS 兵庫県版 2008年12月15日 掲載)

このページのトップへ
Copyright (C) 2009 NPO法人企業内コーチ育成協会 All rights reserved