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企業内コーチ育成のすすめ

※この記事は、㈱帝国データバンク発行「週刊帝国ニュース兵庫県版」に、代表理事・正田佐与が月1回ペースで連載している記事「企業内コーチのすすめ」を、同社神戸支店のご厚意により、転載させていただいています。

第一回 企業内コーチ中国へ行く
第二回 危機感共有を引き出すコミュニケーション
第三回 出店ラッシュを支えたリーダー育成
第四回 カギは「学ぶ」企業と個人
第五回 「オーラのないリーダー」の時代?
第六回 女性活用のコツは?
第七回 やる気のない人をやる気にさせるには?
第八回 リーダーの「叱る力」

第九回 話を聴けない若手、急増中?

第十回 社長が「承認」を学ぶとき
第十一回 「ゆとり世代」を戦力にするコツ

やる気のない人をやる気にさせるには?

 コーチング講座に来られる経営者・管理職の方々は、皆さん部下を指導しモチベーションアップさせ、成長させることが、部門業績の向上に結びつくことをよく理解されている方々です。しかし、職場には色々な人がいるもので、時にコーチングにとどまらない切実な悩みを漏らされます。

 先日受けたご質問が、
「やる気のない人をどうコーチングするのですか?」

 コーチングの教科書的な回答ですと、1行で終わってしまいます。
「『自分は成長する必要がない』と思っている人は、コーチングの対象になりません」──。

 基本的にそうなのです。選手がトラックを走ろう、あるいは少々疲れても歩こうと思っているうちは、コーチは選手に「伴走」し、励ましゴールを見せて、前に進む手伝いをすることができます。ところが、トラックにうずくまり動かなくなった選手を、動かすことはできません。別のアプローチが必要です。

『部下の「やる気」は上司で決まる』という著書のある㈱リンクアンドモチベーションの小笹芳央氏も、「やる気の『ない』部下について、
上司がやる気を作ってあげることはできない」
と言っています。

●実際の職場にいる「やる気のない人」


 ただ、これではあまりに「通り一遍」ですので、実務にもう少し即した回答を考えてみました。

 コーチングの範疇に入るものもありますし、入らないものもあります。

「やる気のない」の原因は、人によって様々です。

一般職員では、

①職場が会社・組織の収益に大きく関係しておらず、花形職場でないためモチベーションが下がっている。
②あるいは、「現在の上司に認められていない」と思っている。(現実に非常に多い)
③職場に緊張感が欠けていて、仕事に一生懸命になる必要が感じられない。
④うつ病のうちの「逃避型・自己愛型」に分類される、自負心が強くなおかつ傷つきやすい性格の人。ちょっとした叱責でモチベーションが下がってしまう。
⑤家庭に不和、病人など問題を抱えている。


また管理職では、

⑥トップから絶え間なく新しい指示が降りてきて上から下に伝える「伝書鳩」のようになってしまい、自身のビジョンがまったく持てないまま仕事をしている。
⑦部下指導が難しいと匙を投げてしまっている。
⑧生活習慣病などで疲れやすく、体力・気力が落ちてしまっている。


などなどのケースが考えられます。

 このうち、①②⑦のケースでは、上司(⑦のケースではご本人)がコーチングを学ぶことで、同じ人が見違えるように仕事熱心になることがあります。

 例えば──、

 ある自治体の職場で、放置自転車の整理を担当していた人が、仕事にやりがいを見出せず、報告書の書き方も雑になり、住民から苦情が来ていました。

 この人の上司が、研修でコーチングを学んできて、この人に「あなたの仕事は大変な仕事だ。橋を造る仕事ならあとに作ったものが残る。ところが、あなたの仕事はあとに残らん。どんなにしんどいか、わかりますよ」と声をかけた。
(いわゆる「共感」です)

 すると翌日からこの人は俄然「やる気」になり、自転車整理にも精が出ました。だけでなく、商店街と交渉して市営駐輪場を借り上げてもらい、放置自転車をそこに片付けるようにすると、駅前広場がみるみるきれいになりました。

 半年後には、同じ人が市街地を流れる川の両岸に住むホームレスを説得し、全員他に移ってもらうという大仕事をしたのです。

 こういう事例をみると、「やる気のない人」というレッテル貼りは禁物であることがわかります。

 コーチングで「承認」(認める、ほめる)というスキルを学ばれた上司のかたは、一様に

「そうか、自分の中の基準を下げないといけないのですね」


と言われますが、
少し視点を変えることで部下伸びる「芽」をつかむことはでき、やはりそれには上司の方のトレーニングが大事だ、ということになります。

●コーチングでは難しいケース


一方でコーチングでは解決できない問題もあり、③④⑤⑥⑧のケースなどはそうです。

 ③④のケースで望ましいのは、職場にある程度の「厳しさ」を導入するとともに、④の場合の当人にはキャリアカウンセリングやマナー研修を受けさせ、社会人・組織人としての心構えを再度学習してもらう、という処方箋があります。

 また⑤⑥⑧のケースでは、カウンセリングや医学的アプローチが必要だったり、またむずかしいことですが、経営トップの方の意識改革が必要だったりします。

 要は「やる気のない人への対応」も、「原因別に対応するのが望ましい」ということになってしまうのですが、その中でも「上司が正しい育成手法を身につける」という解決策がカバーする範囲は相当に大きいということはいえます。

 「組織」や「人材」の問題は、ひとつのやり方で何もかもうまくゆく、ということはまずありませんので、どの手法も絶対視することなく柔軟にご使用ください。(了)



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