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企業内コーチ育成のすすめ

※この記事は、㈱帝国データバンク発行「週刊帝国ニュース兵庫県版」に、代表理事・正田佐与が月1回ペースで連載している記事「企業内コーチのすすめ」を、同社神戸支店のご厚意により、転載させていただいています。

第一回 企業内コーチ中国へ行く
第二回 危機感共有を引き出すコミュニケーション
第三回 出店ラッシュを支えたリーダー育成
第四回 カギは「学ぶ」企業と個人
第五回 「オーラのないリーダー」の時代?
第六回 女性活用のコツは?
第七回 やる気のない人をやる気にさせるには?
第八回 リーダーの「叱る力」

第九回 話を聴けない若手、急増中?

リーダーの「叱る力」

 

第8回『リーダーの「叱る力」』


●「ほめ上手」の上司と「叱り上手」の上司


 読者の皆様は、部下を「叱れる」自信がありますか。

 NPO法人企業内コーチ育成協会では、基礎コースAの講座で「承認」(認める・褒める)
を身につけた方を対象に、「フィードバック」「叱責」に関する講座(基礎コースB)を行っ
ています。

 今回、6年にわたりコーチングを学び職場で実践してきた人材派遣会社の役員、O氏(この
連載第2回に登場)が講座に参加。

「僕は『フィードバック』が苦手なんだということがわかりました」

神妙な顔で言いました。

 リーダーの方を観察していますと、肯定的な指摘の「承認」を得意とする方、否定的な指摘
の「フィードバック」「叱責」を得意(?)とする方、大きく二通りに分かれるようです。

 職場の「ほめ役」「叱り役」が自然に何となく決まっている、のが想像されますね。

 「叱責派」の厳しいリーダーの方が、コーチングの「承認」の概念に出会うと、強く反発され
るか、何割かの方は、真剣に学び実践され、全体としてみると、非常にいい「コーチ」になら
れます。

 また、「承認派」の上司の方にとって、場面によって「フィードバック・叱責」に切り替え
るのは、かなり努力を要するようです。いわば心のチャンネルの切り替えとか、急な上り坂に
差しかかってアクセルを「ぐっ」と踏みこむようなもので、それ自体を1つの「スキル」と考
えてもいいかもしれません。

●若い人を叱るのはチーム作業を

 心理学では、人を成長させるのに有効な「ほめ:叱り」の割合は、おおむね4:1だと言わ
れます。また、米国の優良企業では、「ほめ:叱り」を5:1の割合でするように、と管理職
層に指導するそうです。

 ほめることが脳に「快」の刺激を与えて伸ばす(強化学習)のに対し、叱ることは「後悔(regret)
」を起こさせることを意図したコミュニケーションだと言えます。最近の脳科学の研究
結果として、「後悔」には、人を成長させる働きがあり、これは新しい状況に適応するための
脳機能なのだそうです。

──ただし、本来それは人の自発的な営みとして起こるのであり、「叱責」によって外部から
人為的に起こさせるのは、意図してもなかなかむずかしいのですが。

「いまどきの若い人」にとっては、職場で上司から叱責を受けたとき、ネット上などにいくら
でも逃げ場があります。

 相手の成長を促進する叱責の仕方として、講座では「チーム作業」をすすめました。―複数
の上司・先輩間で叱る方針をぶれさせないこと、他人の「正しい叱責」を否定しない、尻馬に
乗って攻撃しない、できれば第三者がフォローに回り、逃げ道をつくるのではなくソフトに
「後悔」を促すような質問をしてやる、というやり方です。

 ただ、このやり方がどんな場合でも有効かという確証はなく、受講生の皆様の健闘を祈るば
かりです。

●大切なリーダーの自己理解

「フィードバック」「叱責」を有効にはたらかせるために、リーダーの方の「自己理解」も
非常に大切です。

 今回の講座では、「強み発見」というツールを使い、リーダーの方々の資質を診断していた
だきました。

 一例を挙げれば、「話すことが得意」という資質をもった人は、語彙力豊富で言葉がどんど
ん出ますから、管理職になったときには勢いで部下を罵ってしまいやすい、といわれます。ま
た、「責任感」という資質も、本来は管理職になくてはならない資質ですが、これも昂じると
部下に厳しいことを言いすぎてしまいやすい。指示命令を出すことが得意な資質も、管理職に
必要とされるものですが、部下に力づくで言うことをきかせるような、パワハラにつながるこ
ともある。などなど。

 これらは、本来その人たちの「強み」ですので、否定してはならないものですが、自分には
そういう傾向がある、と知っておくだけで「いざ」というときマイナスに働くことを抑えられ
るようになります。

 大臣に対して説得ができず逡巡のうえ更迭することになった某首相は…、ひょっとしたら「ア
レンジ」(複数の物事を同時進行させる、決断力が遅くなることもある)という資質が関係し
ていたのでは?とは、あくまで推測で、真相はわかりません。(了)




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